鳥インフル感染、北海道ルート? 中国経ずに渡り鳥南下
2010年12月3日17時1分(朝日新聞)
島根県安来市の養鶏場の鶏が高病原性鳥インフルエンザに感染した問題で、このウイルスはシベリアを南下して中国の感染地を経由せずに国内へ入る渡り鳥の「新たな感染ルート」をたどって日本に入ってきた可能性のあることが、研究者らの分析でわかった。感染が国内に広がっている危険性が増してきた。
シベリアの渡り鳥は秋に南下して日本などで越冬する。これまでは、鳥インフルが広がる中国で鶏と接触して感染し、日本に飛来すると考えられていた。安来市で見つかった高病原性ウイルスは、10月14日に北海道稚内市でカモのふんから採取されたウイルスと遺伝子の配列が99%一致。「渡り」の早い時期に北海道に着いたことから、カモは中国を経由せずにシベリアから直接飛んできた可能性が高いという。
喜田宏・北海道大教授は「これまで北海道のカモから高病原性ウイルスは見つかっていなかった。シベリアでも感染が広がっているのではないか」。農水省疫学調査チームの座長、伊藤寿啓・鳥取大教授も「新たなルートで感染した鳥が入ってきたなら国内での感染拡大の危険性がさらに高まる」とする。カモは全国各地に飛来し、群れの中で感染が広がる。大槻公一・京都産業大鳥インフルエンザ研究センター長は「全国で発生する可能性は高い」と注意を促す。
では、渡り鳥から鶏舎の鶏にどうやって感染したのか。
養鶏場のすぐ隣は、渡り鳥の飛来地として知られる中海。だが、鶏舎の金網で見つかった小さな穴からカモなどが侵入したとは考えにくい。想定されるのは、いったんスズメなど小さな野鳥に感染し、それが中に入る、あるいはカモのふんに含まれるウイルスが昆虫やネズミ、作業員の靴に付着して持ち込まれる、など。大槻センター長は「鶏舎内を消毒し、野鳥や動物が入り込まないように徹底することが重要だ」と話す。