アブシジア(Absidia)属

■俗名
ユミケカビ

■分類
接合菌類

■主要種
Absidia corymbifera

■分布
穀類、ナッツ類、香辛料、食肉加工品、果実、野菜など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:大(シャーレ全体に広がる)
表面性状:綿状、羊毛状
色:白色〜灰白色

■形態
菌糸:無隔壁、無色、ほふく枝
柱軸:洋ナシ形、球形、卵形
胞子:胞子のう胞子、単細胞、亜球形、無色〜灰白色

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、麦芽エキス寒天培地(MEA)
培養温度:25〜30℃
培養期間:5〜7日

■ポイント
発育が早く、培養7日目にはシャーレいっぱいに広がった集落を形成します。培養初期は白色で、時間が経つにつれて灰白色になります。胞子のうと胞子のう柄との境目にある漏斗状の肥大した部分(アポフィーシス)が特徴です。

ムコール(Mucor)属

■俗名
ケカビ

■分類
接合菌類

■主要種
Mucor recemosus

■分布
食肉、果実、野菜、発酵食品など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:大(シャーレ全体に広がる)
表面性状:綿状
色:白色、淡黄褐色〜灰色

■形態
菌糸:無隔壁、無色
柱軸:卵形、円筒形など
胞子:胞子のう胞子、単細胞、亜球形、楕円形、無色

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、麦芽エキス寒天培地(MEA)
培養温度:25〜30℃
培養期間:5〜7日

■ポイント
発育が早く、培養数日で白色集落を形成した後、淡黄褐色〜灰色になります。

リゾプス(Rhizopus)属

■俗名
クモノスカビ

■分類
接合菌類

■主要種
Rhizopus stolonifer、R.oryzae

■分布
穀類、ナッツ類、香辛料、食肉加工品、乳製品、発酵食品、果実、野菜など

■カビ毒
産生することがある

■集落
大きさ:大(シャーレ全体に広がる)
表面性状:綿状
色:菌糸白色
胞子:灰黒色〜黒色

■形態
菌糸:無隔壁、無色、ほふく枝、仮根
柱軸:球形、亜球形
胞子:胞子のう胞子、単細胞、亜球形、褐色

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、麦芽エキス寒天培地(MEA)
培養温度:25〜30℃
培養期間:5〜7日

■ポイント
クモノスカビと呼ばれ、クモの巣のように細い菌糸がシャーレいっぱいに広がります。時間が経つにつれて、菌糸の先端に黒い点状のもの(胞子のう)が見えるようになります。胞子形成部の基部に植物の根のような仮根を形成するのも特徴です。

ビソクラミス(Byssochlamys)属

■分類
子のう菌類
無性世代:ペシロマイセス

■主要種
Byssochlamys fulva、B.nivea

■分布
穀類、果実、果実加工品など

■カビ毒
パツリン

■集落
大きさ:中〜大(6〜8cm)
表面性状:綿状、羊毛状
色:クリーム色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
子のう果:壁なしまたは貧弱、球形〜亜球形、無色〜白色
子のう:8胞子、球形〜楕円形、菌糸上に散在または網目上のゆるい菌糸中に形成、無色
子のう胞子:単細胞、楕円形、平滑、厚膜、無色〜淡黄色
分生子:球形〜楕円形、無色〜淡黄色

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、麦芽エキス寒天培地(MEA)
培養温度:30〜35℃
培養期間:10〜14日

■ポイント
耐熱性があり、果実や果汁の缶詰の汚染カビとして知られています。

エメリセラ(Emericella)属

■分類
子のう菌類
無性世代:アスペルギルス

■主要種
Emericella nidulans

■分布
穀類、豆類、ナッツ類、香辛料など

■カビ毒
ステリグマトシスチン

■集落
大きさ:中〜大(6〜8cm)
表面性状:ビロード状、平坦
色:黄緑色、オリーブ緑色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
子のう果:球形〜亜球形、単生
子のう:8胞子、球形〜亜球形
子のう胞子:レンズ形、赤道面に2本の帯状隆起、赤紫色
分生子:球形、粗面 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、麦芽エキス寒天培地(MEA)、ツァペック寒天培地(CzA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:10〜14日

■ポイント
一般に乾燥に強く、穀類、生薬、香辛料や乾燥地帯の土壌などから多く分離されます。エメリセラ・ニデュランスはエメラルドグリーン色の特有な集落を形成します。

ユーロチウム(Eurotium)属

■俗名
カワキコウジカビ、カツオブシコウジカビ

■分類
子のう菌類
無性世代:アスペルギルス

■主要種
Eurotium amstelodami、E.chevalieri、E.herbariorum、E.repens、E.rubrum

■分布
穀類、貯蔵食品、低水分加工食品、茶葉など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:中〜大(6〜8cm)
表面性状:ビロード状、粉状
色:黄橙色、黄色、橙色、緑色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
子のう果:球形〜亜球形、黄橙色
子のう:8胞子、球形〜亜球形
子のう胞子:レンズ形、赤道面に溝またはひだ
分生子:卵形〜楕円形、滑面または粗面

■培養
培地:M40YA、20%ショ糖加MEA、20%ショ糖加CzA、DG-18
培養温度:20〜30℃
培養期間:10〜14日

■ポイント
好稠整・好乾性のカビであり、ハウスダスト、穀類、工業製品などの乾燥している基質や糖分、塩分を含む水分活性(Aw)の低い食品などに見られます。PDA培地では発育が悪く、M40YAやDG-18などのAwの低い培地でよく発育します。

モナスカス(Monascus)属

■俗名
ベニコウジカビ 

■分類
子のう菌類
無性世代:バジペトスポラ

■主要種
Monascus purpureus、M.ruber

■分布
穀類、香辛料、果実、乾燥果実、食肉、乳製品など

■カビ毒
シトリニン

■集落
大きさ:中〜大(6〜8cm)
表面性状:綿状、羊毛状
色:赤褐色〜褐色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
子のう果:球状、短柄の先端に形成、無色〜赤褐色
子のう:8胞子、球形〜亜球形
子のう胞子:単細胞、卵形〜楕円形、平滑、無色
分生子:洋ナシ形、連鎖状、平滑、無色 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、麦芽エキス寒天培地(MEA)、MY20A
培養温度:25〜30℃
培養期間:10〜14日

■ポイント
特有の赤色系色調をとり、代謝物産生能が強いカビです。代表的な有用代謝物としてモナスカシンがあります。

ネオサルトリア(Neosartorya)属

■分類
子のう菌類
無性世代:アスペルギルス

■主要種
Neosartorya fischeri

■分布
穀類、果実加工品、飲料など

■カビ毒
フミトレモルジン、ベルクロゲン

■集落
大きさ:中〜大(6〜8cm)
表面性状:ビロード状
色:白色〜淡灰緑色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
子のう果:表在性、単細胞、球形〜亜球形、白色〜クリーム色
子のう:8胞子、球形、無色
子のう胞子:レンズ形、赤道面に帯状隆起、表面に微細な隆起、無色
分生子:単細胞、球形〜亜球形、淡黄緑色 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、麦芽エキス寒天培地(MEA)
培養温度:25〜37℃
培養期間:7〜14日

■ポイント
耐熱性があり、低酸素環境でも発育することがあります。そのため熱処理した果実缶詰の変敗をまねくことがあります。クリーム色の集落で、中心部にキラキラとした子のう果を形成します。

タラロマイセス(Talaromyces)属

■分類
子のう菌類
無性世代:ペニシリウム

■主要種
Talaromyces flavus

■分布
穀類、貯蔵食品、加工食品など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:中〜大(6〜8cm)
表面性状:綿状、フェルト状
色:黄色〜明黄赤色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
子のう果:球形、黄色
子のう:8胞子、亜球形〜楕円形
子のう胞子:楕円形、表面に小棘、黄色
分生子:亜球形〜楕円形 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、麦芽エキス寒天培地(MEA)
培養温度:25〜35℃
培養期間:10〜14日

■ポイント
特有の明黄赤色を示し、子のう果は強固で物理的衝撃に強い性質をもっています。

ケトミウム(Chaetomium)属

■俗名
ケタマカビ 

■分類
子のう菌類

■主要種
Chaetomium globosum

■分布
穀類、豆類、ナッツ類、香辛料など

■カビ毒
ケトグロボシン、ケトクロミン、ステリグマトシスチン、ケトミン 

■集落
大きさ:中(5〜7.5cm)
表面性状:綿状、平坦
色:オリーブ褐色〜暗褐色

■形態
菌糸:有隔壁、淡褐色
子のう殻:表在性、球形〜卵形、頂毛・側毛で被われている(ウニ状)、暗褐色〜黒色
子のう:8胞子、こん棒形
子のう胞子:単細胞、レモン形、オリーブ褐色

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、オートミール寒天培地(OA)
培養温度:25〜30℃
培養期間:10〜14日

■ポイント
セルロース分解性が強く、繊維質を変化させるものが多くあります。このような性質から抗カビ試験に用いられます。ウニ状の特有な子のう殻を形成します。

アクレモニウム(Acremonium)属

■分類
糸状不完全菌類 

■主要種
Acremonium charticola、A.strictum 

■分布
穀類、豆類、ナッツ類、果実、野菜、乳製品、飲料など

■カビ毒
産生することがある 

■集落
大きさ:小(1〜4cm)
表面性状:ビロード状、培養初期は部分的に酵母状
色:白色〜淡ピンク色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、円筒形〜楕円形、滑面、無色
分生子柄:菌糸より直生 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
湿っぽいところに生えやすく、一見酵母のような集落を形成します。 

アルタナリア(Alternaria)属

■俗名
ススカビ 

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Alternaria alternata 

■分布
穀類、果実、豆類、ナッツ類、香辛料、野菜など

■カビ毒
テヌアゾン酸、アルタナリオール、アルタナリオールモノメチルエーテル

■集落
大きさ:中〜大(6〜8cm)
表面性状:綿状
色:黒褐色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、多細胞、フラスコ形、こん棒形、粗面、褐色、ポロ型
分生子柄:先端に分離痕を認める、淡褐色 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
分生子は多細胞で特徴的な形をしています。環境中に普遍的な分布をとり、湿度の高いところによく見られます。

アースリニウム(Arthrininm)属

■俗名
アースリナム菌 

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Arthrinium phaeospermum 

■分布
穀類、豆類、ナッツ類、果実、野菜、乳製品など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:中〜大(7〜8cm)
表面性状:羊毛状、綿状
色:白色〜灰白色、赤色色素を産生することがある

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、楕円形、滑面、褐色〜黒色 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
空中に多く、長期間にわたり生残します。白色〜灰色の集落の中に黒褐色の点状に見える分生子を形成します。 

アスペルギルス(Aspergillus)属

■俗名
コウジカビ 

■分類
糸状不完全菌類 

■ポイント
アスペルギルスは種によって集落の色調や性状が著しく異なります。そのため、集落からは同じアスペルギルスとは思えないカビもありますが、種によって特徴的な色や性状をとるので、培地に生えた集落を見るだけで同定が可能な種もあります。多量の胞子を産生し、なかにはカビ毒を産生する種もあります。

主要種には、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・フミガタス、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・オクラセウス、アスペルギルス・レストリクタス、アスペルギルス・バージカラーがあります。

 

1.アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)

■分布
穀類、穀類加工品、豆類、ナッツ類、香辛料など

■カビ毒
アフラトキシン 

■集落
大きさ:中(5〜7cm)
表面性状:粉状、平坦、放射状
色:黄緑色、緑色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、球形、亜球形、粗面、無色、フィアロ型
頂のう:球状、亜球状 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ツァペック寒天培地(CzA)
培養温度:25〜35℃
培養期間:7〜10日

■ポイント
アスペルギルス・フラバスが産生するカビ毒としてアフラトキシンと名づけられました。特有の緑色を呈し、菌核を形成するものもあります。

 

2.アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)

■分布
穀類、発酵食品など

■カビ毒
フミトレモルジン 

■集落
大きさ:中〜大(6〜8cm)
表面性状:ビロード状、粉状、平坦
色:濃緑色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、球形、粗面、無色〜緑色、フィアロ型
頂のう:フラスコ状 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ツァペック寒天培地(CzA)
培養温度:25〜45℃
培養期間:7〜10日

■ポイント
高湿性カビです。アスペルギルス症を引き起こすカビとしても知られています。

 

3.アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)

■俗名
クロコウジカビ 

■分布
穀類、茶葉、香辛料、乾燥食品など

■カビ毒
オクラトキシン 

■集落
大きさ:中(5〜7cm)
表面性状:粉状、平坦
色:黒褐色〜黒色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、球形、粗面、いぼ状、黒色、フィアロ型
頂のう:球状 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ツァペック寒天培地(CzA)
培養温度:25〜35℃
培養期間:7〜10日

■ポイント
黒色の胞子を多量に産生し、非常に汚染しやすいカビです。

 

4.アスペルギスル・オクラセウス(Aspergillus ochraceus)

■分布
穀類、穀類加工品、ナッツ類、香辛料、生コーヒー豆など

■カビ毒
オクラトキシン 

■集落
大きさ:中(5〜7cm)
表面性状:ビロード状、粉状、平坦
色:黄色〜黄褐色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、球形、滑面、無色、フィアロ型
頂のう:球状

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ツァペック寒天培地(CzA)
培養温度:25〜35℃
培養期間:7〜10日

■ポイント
特有の黄色〜黄褐色を呈します。オクラトキシンを産生するカビとしても知られています。

 

5.アスペルギルス・レストリクタス(Aspergillus restrictus)

■分布
穀類、乾燥食品など

■カビ毒
産生しない 

■集落
大きさ:小〜中(2〜5cm)
表面性状:ビロード状、綿状、平坦
色:緑色、濃緑色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、長円形、粗面、フィアロ型、長連鎖
頂のう:半球状、フラスコ状 

■培養
培地:M40YA、20%ショ糖加MEA、20%ショ糖加CzA、DG-18
培養温度:25〜30℃
培養期間:10〜14日

■ポイント
PDA培地では発育が悪く、M40YAやDG-18などのAwの低い培地でよく発育します。頂のうの形がペニシリウムと似ていますが、PDA培地での発育が明らかに異なります。

 

6.アスペルギルス・バージカラー(Aspergillus versicolor)

■分布
穀類、乳製品、ナッツ類、香辛料など

■カビ毒
ステリグマトシスチン 

■集落
大きさ:小(2〜4cm)
表面性状:ビロード状、平坦
色:緑色、黄緑色、橙色、紅色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、球形、亜球形、粗面、いぼ状、フィアロ型
頂のう:亜球状、フラスコ状(小さい) 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ツァペック寒天培地(CzA)
培養温度:25〜30℃
培養期間:7〜10日

■ポイント
名前(versicolor=variable color)のとおり、さまざまな色を呈すカビです。

アウレオバシジウム(Aureobasidium) 属

■俗名
黒色酵母様菌、黒酵母 
  

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Aureobasidium pullulans 

■分布
穀類、豆類、ナッツ類、果実、野菜、飲料、植物など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:小〜中(3〜6cm)
表面性状:ビロード状、酵母様
色:淡桃色(若い集落)〜黒褐色(成熟)

■形態
菌糸:有隔壁、無色〜褐色
胞子:分生子、単細胞、卵形、楕円形、平滑、無色、出芽型
 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
黒色酵母様菌や黒酵母と呼ばれ、酵母と間違えられやすいカビですが、環境中に広く分布する好湿性カビです。アウレオバシジウム・プルランスの培養液は食品添加物として登録されており、増粘安定剤などとして用いられています。 

ボトリチス(Botrytis)属

■俗名
ハイイロカビ 
  

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Botrytis cinerea 

■分布
果実、果実加工品、野菜など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:大(シャーレ全体に広がる)
表面性状:綿状
色:灰白色〜暗褐色

■形態
菌糸:有隔壁、無色〜褐色
胞子:分生子、単細胞、卵形、楕円形、滑面、無色〜淡褐色
分生子柄:菌糸からブドウ房状に直生
 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
イチゴ、ブドウ、ナス、トマトなどの果物や野菜に病気を起こす植物病原性カビです。 

クラドスポリウム(Cladosporium)属

■俗名
クロカビ、クロカワカビ 
  

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Cladosporium cladosporioides、C.sphaerospermum 

■分布
乾燥穀類、貯蔵食品、植物、油剤など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:小〜中(2〜5cm)
表面性状:ビロード状、平坦
色:オリーブ色、暗褐色

■形態
菌糸:有隔壁、褐色
胞子:分生子、単細胞、出芽型
    C.cladosporioides:楕円形、平滑、明褐色
    C.sphaerospermum:球形、いぼ状、褐色
分生子柄:分枝することは少ない
 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
一般環境に最も多く見られるのは、クラドスポリウム・クラドスポリオイデスとクラドスポリンム・スフェロスパーマムで、汚染、劣化の代表的な原因カビです。 

カーブラリア(Curvularia)属

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Curvularia lunata 

■分布
穀類、豆類、ナッツ類、果実、野菜など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:中〜大(6〜8cm)
表面性状:綿状、ビロード状
色:黒褐色〜黒色

■形態
菌糸:有隔壁、無色〜褐色
胞子:分生子、多細胞、ブーメラン形、紡錘形、滑面、褐色
分生子柄:先端部が湾曲し、ジグザグ状となる、淡褐色
 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
分生子は多細胞で特徴的な形をしています。アルタナリアと似ていますが、カーブラリアの分生子には縦の隔壁はできません。植物病原菌として斑点性、葉枯れ性の病気を起こすことがあります。

エピコッカム(Epicoccum)属

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Epicoccum nigrum (=E.purpurascens) 

■分布
穀類、豆類、ナッツ類、果実、野菜、食肉加工品など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:中〜大(5〜8cm)
表面性状:綿状、羊毛状、浸出液が見られる
色:黄褐色、赤色、褐色

■形態
菌糸:有隔壁、無色〜褐色
胞子:分生子、多細胞、俵形、球形、いぼ状、暗褐色、アレウロ型
分生子柄:非常に短い
 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
培養すると分生子を形成しないことがあります。特徴的な黄橙色を呈するので、その色調により同定することが可能です。

フザリウム(Fusarium)属

■俗名
アカカビ

■ポイント
冷帯、温帯地方に多く、植物病原性カビです。カビ毒を産生する種が多くあります。

主要種に、フザリウム・グラミネアラム、フザリウム・バーティシリオイデスがあります。

 

1.フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)

■俗名
ムギアカカビ病菌

■有性世代
Gibberella zeae

■分布
穀類(麦、米、トウモロコシ)、穀類加工品、豆類など

■カビ毒
トリコテセン系マイコトキシン(ニバレノール、デオキシニバレノール)、ゼアラレノン 

■集落
大きさ:中〜大(6〜9cm)
表面性状:綿状、羊毛状
色:灰黄色、橙色、赤橙色、紫赤色

■形態
菌糸:有隔壁、無色〜赤橙色
胞子:大型分生子:三日月形、無色、多細胞(3〜7隔壁)
    小型分生子:形成しない
分生子柄:円筒形、短い
 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)、カーネーション葉寒天培地(CLA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
ムギアカカビ病菌といわれるように、麦に寄生すると収穫期の穂が赤褐色を帯びます。そのため、麦圃場での汚染防除が行政的に支援されています。

 

2.フザリウム・バーティシリオイデス(Fusarium verticillioides)

■俗名
トウモロコシアカカビ病菌

■有性世代
Gibberella moniliforme

■分布
穀類(トウモロコシ、麦、米)、豆類、ナッツ類、香辛料など

■カビ毒
フモニシン、モニリフォルミン 

■集落
大きさ:中〜大(7〜9cm)
表面性状:羊毛状、粉状
色:ピンク色、淡クリーム色、ライラック色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:大型分生子:長い紡錘形、多細胞(3〜7隔壁)
    小型分生子:こん棒形、単細胞、長い連鎖
 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)、カーネーション葉寒天培地(CLA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
トウモロコシに特異的に寄生する植物病原菌です。寄生すると赤みを帯びると同時にカビ毒を産生します。

ゲオトリクム(Geotrichum)属

■俗名
ミルク腐敗カビ 

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Geotrichum candidum 

■分布
豆類、果実、野菜、乳製品、食肉、飲料など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:中〜大(6〜8cm)
表面性状:酵母状、粉状、平坦
色:白色〜クリーム色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、円筒形、樽形、楕円形、滑面、無色
    分生子柄はなく、栄養菌糸が文節化し、分断されて分生子となる
 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
白色の特有の集落を形成し、強い発酵臭があります。乳製品、食肉などを汚染しやすく、特に乳製品では同色のため、汚染に気づかないことがあり、注意が必要です。

モニリエラ(Moniliella)属

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Moniliella suaveolens、M.acetoabutens 

■分布
酸性食品、乳製品、甘味食品、植物など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:小〜中(2〜5cm)
表面性状:粉状、ビロード状
色:白色〜淡灰色

■形態
菌糸:有隔壁、無色、切断して分節型分生子となる
胞子:分生子、単細胞
分節型分生子:無色〜淡褐色、円筒形、樽形
出芽型分生子:無色〜淡褐色、長円形、亜球形、洋ナシ形、連鎖
 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
好酸性でピクルスや食酢などに発生します。 

ニグロスポラ(Nigrospora)属

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Nigrospora oryzae、N.sphaerica 

■分布
穀類、豆類、トウモロコシ、香辛料、果実、植物など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:中〜大(6〜8cm)
表面性状:綿状、羊毛状
色:黒褐色、灰黒色

■形態
菌糸:有隔壁、暗オリーブ色
胞子:分生子、単細胞、球形、楕円形、滑面、黒色、アレウロ型
分生子柄:つぼ形、短い
 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
本来は植物に寄生しながら空中に浮遊するカビです。

ペシロマイセス(Paecilomyces)属

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Paecilomyces variotii、P.lilacinas 

■分布
穀類、豆類、ナッツ類、香辛料、食肉加工品、乳製品、乾燥果実など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:中〜大(5〜8cm)
表面性状:ビロード状、粉状
色:P.variotii:黄褐色
  P.lilacinus:薄紫〜ライラック色
 

■形態
菌糸:有隔壁
胞子:分生子、多細胞、フィアロ型
    P.variotii:楕円形、滑面、無色、連鎖
    P.lilacinus:球形、滑面、無色
 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)、麦芽エキス寒天培地(MEA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
土壌などに由来し、一般環境に広く分布します。ペニシリウムとよく似た形態をしていますが、緑色は呈さないので集落の色で区別できます。大量の分生子を飛散させるため、汚染カビとしても重要です。 

ペニシリウム(Penicillium)属

■俗名
アオカビ

■ポイント
ペニシリウムは一般にビロード状で緑色の集落を形成します。菌種が多く、共通構造としてペニシリと呼ばれるほうき状の分生子産生構造をもちます。温帯地方に多く、比較的乾燥に強いカビです。飲料汚染をすることも知られており、生態は多様です。

主要種に、ペニシリウム・シトリナム、ペニシリウム・エクスパンザム、ペニシリウム・イスランジカムがあります。

 

1.ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum) 

■俗名
シトリナム黄変米菌 

■分布
穀類、穀類加工品、豆類、ナッツ類、香辛料、生コーヒー豆、乳製品、食肉加工品、冷凍食品など

■カビ毒
シトリニン 

■集落
大きさ:小〜中(2〜5cm)
表面性状:ビロード状
色:青灰緑色、裏面:レモン色〜褐色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、球形、亜球形、滑面、無色、フィアロ型
分生子柄:滑面
ペニシリ:複輪生

■培養
培地:ツァペック酵母エキス寒天培地(CYA)、PDA、MEA、CzA
培養温度:20〜30℃
培養期間:10~14

■ポイント
広い範囲に分布しており、黄変米カビとしても知られています。 

 

2.ペニシリウム・エクスパンザム(Penicillium expansum) 

■俗名
リンゴアオカビ病菌 

■分布
果実(リンゴ、ナシ、モモなど)、果実加工品、野菜(サツマイモ、テンサイ、ニンジン、タマネギなど)、穀類、穀類加工品、豆類、ナッツ類、生コーヒー豆、乳製品、食肉加工品、土壌など

■カビ毒
パツリン 

■集落
大きさ:中(5〜7cm)
表面性状:ビロード状、束状
色:鈍緑色〜青緑色、裏面:淡黄色、淡褐色、褐色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、楕円形、滑面、無色、フィアロ型
分生子柄:束状、長い
ペニシリ:複輪生

■培養
培地:ツァペック酵母エキス寒天培地(CYA)、PDA、MEA、CzA
培養温度:20〜30℃
培養期間:10~14

■ポイント
リンゴに特異的に寄生し、パツリンを産生します。そのため、国内でリンゴ果汁のパツリン規制が取られています。

 

3.ペニシリウム・イスランジカム(Penicillium islandicum) 

■俗名
イスランジア黄変米菌 

■分布
穀類、穀類加工品、豆類、香辛料など

■カビ毒
ルテオスカイリン、シクロクロロチン、イスランジトキシン 

■集落
大きさ:小〜中(2〜5cm)
表面性状:ビロード状、羊毛状、縄状
色:暗緑色、暗黄緑色、裏面:橙褐色〜赤褐色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、亜球形、滑面、無色、フィアロ型
分生子柄:比較的短い
ペニシリ:複輪生

■培養
培地:ツァペック酵母エキス寒天培地(CYA)、PDA、MEA、CzA
培養温度:20〜30℃
培養期間:10~14

■ポイント
熱帯〜温帯地方に多く、発育すると緑色の集落周辺部に赤色色素を産生します。 

スタキボトリス(Stachybotrys)属

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Stachybotrys chartarum 

■分布
穀類、豆類、ナッツ類など

■カビ毒
サトラトキシン 

■集落
大きさ:小(2〜4cm)
表面性状:綿状
色:黒褐色〜黒緑色

■形態
菌糸:有隔壁、無色、褐色
胞子:分生子、単細胞、楕円形、いぼ状、黒褐色、フィアロ型
分生子柄:菌糸より直生、先端にアンプル型のフィアライドを3〜7本輪生

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
セルロース分解性の強いカビです。 

トリコデルマ(Trichoderma)属

■属名
ツチアオカビ 

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Trichoderma viride 

■分布
穀類、豆類、ナッツ類、果実、野菜、キノコなど

■カビ毒
トリコテセン系カビ毒 

■集落
大きさ:大(シャーレ全体に広がる)
表面性状:綿状
色:濃緑色、黄緑色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、球形、平滑、無色、フィアロ型
分生子柄:無色、気中菌糸より直生

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)、セルロース寒天培地
培養温度:20〜30℃
培養期間:5〜7日

■ポイント
発育が早く、特有の緑色集落を形成します。セルロース分解性が強く、高湿を好み、湿った食品や環境を汚染します。 

ワレミア(Wallemia)属

■俗名
アズキイロカビ 

■分類
糸状不完全菌類

■主要種
Wallemia sebi (1属1種) 

■分布
穀類、貯蔵農産物、高糖性食品、甘味菓子、ジャム、乾燥食品など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:小(1〜2cm)
表面性状:粉状、平坦
色:アズキ色、チョコレート色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、球形、楕円形、明褐色、連鎖、分節型
分生子柄:円柱状、明褐色
 

■培養
培地:M40YA、20%ショ糖加MEA、20%ショ糖加CzA、DG-18
培養温度:20〜30℃
培養期間:7〜10日

■ポイント
まんじゅうやようかんなどの高糖性食品を汚染する好稠性カビです。PDA培地では発育が悪く、M40YAやDG-18などのAwの低い培地でよく発育します。集落は他のカビに比べて小さく、特有のアズキ色、チョコレート色を呈しますが、汚染する食品の色とよく似ていて気づきにくいことがあるため注意が必要です。

フォーマ(Phoma)属

■分類
分生子果不完全菌類

■主要種
Phoma glomerata、P.macrostoma 

■分布
畜肉、冷凍食品など

■カビ毒
産生しない

■集落
大きさ:中〜大(4〜8cm)
表面性状:酵母様、中心部に分生子殻を形成
色:明褐色、黒褐色、桃色

■形態
菌糸:有隔壁、無色
胞子:分生子、単細胞、卵形、楕円形、滑面
分生子柄:埋没、球状、上端に孔口があり、成熟すると粘液状分生子を放出
 

■培養
培地:ポテト・デキストロース寒天培地(PDA)、ポテト・キャロット寒天培地(PCA)
培養温度:15〜30℃
培養期間:7日

■ポイント
表面がつぶつぶとした特有の集落を形成します。 

酵母

酵母はカビと同じ真菌の仲間です。集落は細菌に似ており、粘性、湿性の小集落を形成します。主要種に、サッカロマイセス・セレビシエ、ロドトルラ・ルブラがあります。

 

1.サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)

■俗名
パン酵母、ワイン酵母 

■集落
大きさ:小
表面性状:平滑、光沢性
色:クリーム色

■形態
出芽型細胞:球形、楕円形
仮性菌糸:+/−
厚膜胞子:−
 

■培養
培地:PDA、酵母エキス・麦芽エキス寒天培地(YMA)
培養温度:25〜37℃
培養期間:3〜5日

■ポイント
発酵性が強く、パン、ワイン、みぞ、しょうゆなどの食品に利用されています。発育すると特有の発酵臭を放ちます。 

 

2.ロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)

■俗名
赤色酵母 

■集落
大きさ:小
表面性状:平滑、光沢性またはしわ状、非光沢性
色:ピンク色

■形態
出芽型細胞:球形、伸張形
仮性菌糸:−
厚膜胞子:−
 

■培養
培地:PDA、酵母エキス・麦芽エキス寒天培地(YMA)
培養温度:20〜30℃
培養期間:3〜5日

■ポイント
食品加工現場における湿っぽい場所や水回りでピンク色のぬめりの原因となる菌です。色素は低〜中温で産生しますが、高温では産生しなくなります。