20〜30代「生肉」ご用心 知識なく?食中毒多発

7月27日7時56分配信 産経新聞

 

 【夏 暮らし注意報】

 気温が高く、湿気が多い夏場、心配なのが食中毒だ。特に20〜30代が生肉や生焼けの肉を食べて発症する被害が後を絶たず、東京都は今年初めて、若者向けに生肉に注意するようCMを制作。生肉の大半は国の衛生基準に基づかず、飲食店の自主判断で提供されている。消費者自らが正しい知識を身につけたうえで、自衛が必要となっている。


 ◆75度、1分超加熱を

 厚生労働省によると、昨年国内で発生した食中毒は1048件。原因物質で最も多いのは、牛や鳥の腸管に生息する細菌「カンピロバクター」(345件、2206人)だ。新鮮な肉に付着していることがあり、少量の菌でも発症しやすいのが特徴。下痢や嘔吐(おうと)などの症状が現れ、厚労省食中毒被害情報管理室では原因の大半を「肉類の生食や、加熱不十分」とみている。

 生肉では、病原性大腸菌O157の懸念もある。山口県や奈良県で昨年8月、同一チェーン店で飲食した客38人がO157を発症。このうち37人が自ら加熱する「角切りステーキ」を食べていた。加熱不十分も一因とみられ、厚労省などでは食肉や内臓を調理する際に「中心部分を75度以上、1分以上」加熱するよう呼びかけている。

 消費者の「生好き」嗜好(しこう)も問題視されている。

 都が昨年9月、20歳以上の都民1千人にインターネットで行った生食に関する調査によると、3カ月以内に鳥わさやレバ刺しなど生肉を食べた人は40%。20代53%、30代47%と若い世代が目立った。都健康安全課では「子供のころから正確な指導を受けていないのか、若い人の肉の生食が多い」と指摘。このため、都では都内18カ所の映画館で若者向け啓発CMを放映している。

 ◆「嗜好は禁止できぬ」

 厚労省が定めた「生食用食肉の衛生基準」(平成10年)では、基準を満たした肉のみ「生食用」として流通できる。しかし、昨年1年間で生食用として国内から出荷された牛肉はない。鶏肉は生食を想定しておらず、基準自体がない。「牛レバ刺し」や「鳥わさ」などの多くは、飲食店側が加熱用の食材を自主判断で生食として提供しているのが実態だ。

 基準は行政指導にとどまり、被害者が出ない限りは業者が罰せられることはない。都健康安全課では「すべての生肉に問題があるわけではないため、嗜好を『禁止』することはできない。しかし、リスクを知ってほしい」と警鐘を鳴らす。

 新型インフルエンザが蔓延(まんえん)し、消費者の手洗いが徹底された昨年は、食中毒の発生件数は過去10年で最低を更新。厚労省は「予防に手洗いは非常に有効。調理従事者だけでなく、消費者も徹底してほしい」と呼びかけている。

 ■10年間で減少傾向

 厚生労働省によると、食中毒の発生件数は平成10年が3010件だったのに対し、21年は1048件と減少傾向にある。10年当時、最も多かった原因菌は「腸炎ビブリオ」で27.9%。汚染された魚介類を介して感染するが、21年には1.3%にとどまった。食品衛生法で衛生管理の基準が厳格化されたことなどが影響したとみられる。